不動産コンサルタントのつぶやき

名南財産コンサルタンツ 不動産事業部 公式ブログ

不動産仲介業から見る民泊

昨日の新聞紙面に、個人宅宿泊、いわゆる「民泊」について、ルールを策定し許可制にしたうえで
来春より解禁する動きがあるとの記事が掲載されました。

この「民泊」とは、個人が所有しているマンションや戸建住宅の一室などを、インターネットを介して利用者に
貸し出すことです。近年急速に利用登録が拡大されている不動産の活用方法です。

「民泊」は旅館業法(ホテル営業や旅館営業等に関する法律)に抵触する部分が多く、
問題も指摘されています。しかし、東京五輪に向けた宿泊施設不足の解消等のため、「民泊」を
有効活用するために、今回のルール策定、許可制の導入に繋がったと考えられます。

不動産の活用方法として、「売却」や「賃貸」といった提案に含めて、「民泊」も選択肢の一つとして
検討されることが増えてくると想定されます。
そこで、この「民泊」の問題点について考えてみたいと思います。

①火災等の事故があった場合の所有者の責任問題。
 記事によると、一般住宅を貸し出す場合には一定の消防等の設備については求めない方向と
 ありますが、実際に火災が起こった場合、所有者の責任が問われる可能性が高いと考えられます。

② 海外からの訪日者の利用も多いと考えられ、近隣トラブルも考えられる。
 海外からの利用者の場合、近隣の方は観光地と違い一般の方であることが多く、言葉や文化の
 問題に対応できるとは限りません。一般住宅を貸し出す場合、文化の違いからくる様々な問題が
 起こることが考えられます。

③住宅の維持管理の問題。
 仮に賃貸住宅として貸し出す場合、一般的には不動産管理会社に管理を委託するため、
 定期的に住宅の状況を確認してもらうことが可能です。しかしながら「民泊」の場合、
 ネット仲介業者にそういった管理サービスがあるかの確認が必要です。

ルールが整備され、上記の問題点が解消されるようであれば「民泊」は不動産の活用方法として
一つの選択肢になるかとは思いますが、それまでは多くの問題点があることを認識した上で
利用されることをお勧めいたします。

 

大阪に迫る名古屋!?

 タイトルを見ると何のことだろう?と思われるかもしれませんが、金曜日の日経新聞に載っていたオフィス賃料に関する記事の見出しです。オフィス仲介大手の三鬼商事の調査による10月末の大阪中心部と名古屋中心部の月額平均募集賃料の差が過去最低水準の3.3平方メートル(1坪)あたり324円まで縮まったそうです。

 記事では、1990年代半ばには大阪が名古屋を5000円近く上回っていた平均賃料が、2008年のリーマン・ショックで大きく下落した後、いち早く回復を遂げる名古屋に比べて大阪の回復が遅れているため、両都市の賃料の差が縮まっており、名古屋のリニア効果などもあって、数年内に名古屋が大阪を越える局面がありそうだ、と伝えています。

 大阪と名古屋ですが、人口こそ、大阪が269万人、名古屋が228万人と、それほどの差はありませんが、経済規模では、市内総生産が大阪約18.7兆円に対して名古屋約11.8兆円(2011年の名目値)とかなりの差があります。そもそも周辺に京都、神戸、堺と3つもの政令指定都市がある大阪圏の中心である大阪市と周辺に大きな都市がない名古屋市とでは中枢性に大きな違いがあります。そのような両都市で、オフィスビルの賃料水準があまり変わらないとなると、違和感を抱く方もおられるかもしれません。

 しかしながら、大阪が金融機関などの合併により本社をことごとく東京に移されたり、シャープに象徴されるように大阪を基盤とする電機メーカーが不振に喘いでいたりする一方、名古屋では、トヨタが相変わらず好調ですし、MRJが初飛行し、今後航空宇宙産業の集積が期待されています。さらに、記事にもあるように今後リニア中央新幹線の開通を見据えた動きが本格化することなどを考えると、名古屋の方が地域経済に勢いがあることは自明の理であり、そういった意味では両都市の都心部のオフィス賃料が横並びになることは、それほどおかしなことではないのかもしれません。

 今年の都道府県地価調査が発表された際に本ブログに書いたように地価水準でみても、大阪と名古屋のトップ商業地(梅田と名駅)の最高価格地点の1平方メートル当たりの地価がそれぞれ1,100万円と1,020万円となっています。今後両都市のトップ商業地の地価も徐々に差が縮まっていくのではないでしょうか。

 品川-名古屋間のリニア中央新幹線が開通するのが2027年。大阪まで開通するのはその18年後の2045年の予定です。人口減少率は大阪の方が高いことを考えると、いずれオフィス賃料や地価以外の指標でも名古屋が大阪と同水準となることが多くなっていくのかもしれません。

 私も大阪に住んでいたときそのように考えていたのですが、大阪のライバルはあくまで東京であって、名古屋なんて眼中にないと思っている方が多いのではないでしょうか。しかし、東京はあらゆる面で巨大化し過ぎ、もはや大阪とは比肩しうる存在ではなくなってしまいました。そういった意味では、都市としての構造が比較的類似している大阪と名古屋が連携を深めていく必要があるようにも思われます。

“おうちダイレクト”により、売主は仲介手数料分得をするか

 11月5日に、Yahooとソニー不動産が、検索サイト「Yahoo!不動産」を利用して、売主が不動産仲介業者を介さずに中古マンションを販売する新しい販売方法“おうちダイレクト”を発表しました。


おうちダイレクト http://pr.yahoo.co.jp/release/2015/11/05b/


 おうちダイレクトの特徴

①豊富な情報量の物件データベースと高精度な不動産価格推定エンジン
 おうちダイレクトでは、マンションに関する豊富な情報がデータベース化されており、利用者は自分の住戸の推定成約価格を知ることができるそうです。
 推定成約価格の精度は、1都3県で6.08%、東京都23区で5.39%とされています。


②「Yahoo!不動産」に簡単無料掲載(売り出し)
 中古マンションの所有者は、簡単な情報入力と所有者確認手続きのみで、自分の住戸の物件情報を「yahoo!不動産」に掲載し、購入希望者を募ります。
 中古マンションの売出価格は、上記①を参考に所有者が自由に設定でき、掲載料は無料とされています。


③購入者との直接質問・回答
 おうちダイレクトでは、購入検討者が所有者に対して、中古マンションに関する質問をウェブサイト上で直接行うことができ、所有者が直接回答します。
  この機能により、所有者は中古マンションのアピールポイントを購入検討者に直接伝えることができるそうです。


④プロによる安心取引サポート
  中古マンションの見学から売買条件の調整や交渉、重要事項の説明、売買契約の締結、売買代金の決済・物件の引渡しといった一連の不動産取引の実務については、ソニー不動産が仲介サービスを提供することで、安全・安心な不動産取引ができると謳われています。


⑤売主の仲介手数料は“無料”
  所有者が自分で中古マンションを販売することで、物件の販売に関連する活動を大幅に低減できることから、売主が本来負担するべき仲介手数料が無料になると謳われています。


 おうちダイレクトで販売する際、所有者が行うこと

Ⅰ.売出価格を決める。
 売出価格は重要です。中古マンションの売却を考えられている方には、高値で市場で売り出しし、反響が少なければ価格を下げればよいと安易に考えられている方もいらっしゃるかもしれませんが、市場が変化したり、新たに競合する物件が市場に出てくるなどし、売却期間が長くなってしまった結果、売却価格が、当初の推定成約価格を下回るという可能性もあります。


Ⅱ.管理費・修繕積立金・その他費用を確認する。
 中古マンションによっては分譲時から管理費等の金額が変更となっているものもあります。管理費等についての確認については所有者自身で調査しなければなりません。
 また、おうちダイレクトでは、管理費等の証明書の発行が求められています。証明書の発行について手数料が発生する場合は売主が負担することになっています。
 
Ⅲ.売り出しフォームの入力を自分でする。
 おうちダイレクトへの売り出しに関するフォームは所有者が入力します。フォームの入力には、おうちダイレクト物件掲載ガイドラインを含め、不動産の表示に関する法令・規則等に反することはできません。例えば、「完全」「万全」等完全性を表す表現であったり、「高級」「資産価値の高い」等割安さを表す表現等を利用することはできません。また、周辺の施設については、施設の固有名詞と道路距離を調べて記載する必要があります。


Ⅳ.購入検討者の質問に答えること
 所有者は、中古マンションの販売開始以後に、購入検討者からの質問に回答する必要があります。回答には、普段見ることがほとんどない「管理規約」や「総会資料」等を調べる必要があったり、質問の中には、管理会社への調査が必要な場合も出てくると思われます。


 おうちダイレクトは、不動産仲介業者で働いている(いた)人等、中古マンションの販売に精通している人で、ある程度時間に余裕がある人にとっては、魅力ある販売方法だと思います。


 しかし、一般の方が利用するには疑問を感じます。おうちダイレクトを利用して、仲介手数料を無料にするためには、所有者自ら行わなければならないことが多く、また、一般の方には慣れない事ばかりですので、作業等で、時間が取られることが多いと思われます。

 また、通常、不動産仲介業者と媒介契約を締結し販売しますと、販売情報は不動産仲介業者間に広まる
仕組みとなっており、多くの不動産仲介業者を通じて、多くの購入検討者に紹介されます。おうちダイレクトは、販売方法が「Yahoo!不動産」に限定されているため、そのような不動産業者間のネットワークを利用することができません。また、他の媒体を利用して中古マンションを探している購入検討者の目に触れることはありません。

 そのほか、おうちダイレクトの特徴①の成約価格の精度に記載があるように、成約価格が推定成約価格を下回る等、成約価格と推定成約価格には、ある程度“ブレ”が生じます。仲介手数料は売買価格の3%+6万円(法令上限価格)ですが、成約価格のブレは、その価格を超える可能性も高いです。おうちダイレクトに類似し、売主の仲介手数料に特典をつけ、中古マンションを販売する会社もありますが、“3%”に着目して、不動産仲介業者を選択することはお勧めできません。

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