宅地建物取引業法では、不動産業者は購入予定者に対し、不動産の売買契約及び
賃貸借契約を締結するまでの間に、宅地建物取引士が記名押印した重要事項説明書を交付し、
宅地建物取引士自らが説明を行わなければならないと定められています。

 現在はその重要事項説明について、対面による説明が義務付けられていますが、
平成25年に策定された「IT利活用の裾野拡大のための規制制度改革集中アクションプラン」の中で、
インターネット等を利用した、対面以外の方法による重要事項説明について、具体的な手法や
課題への対応策に関する検討を行うこととされました。

 そして平成26年中に具体的な手法等の検討がなされ、その結果、ITによる重要事項説明については、
まず社会実験を行って結果を検証することになり、先日、そのガイドラインが国交省より発表されました。
予定では来年度から最大2年間実施される予定で、社会実験への参加登録企業の募集が7月3日まで
行われていました。

 社会実験を経たうえで実施要綱等が決まると思いますが、本ガイドラインを見ることで、実際にITによる
重要事項説明が導入されたときのイメージが掴むことができると思います。
(以下、ITによる重要事項説明を「IT重説」と呼びます)

  それでは国交省が発表しているガイドラインの内容を見てみましょう。

  ■実験の対象取引
   賃貸取引及び法人間取引

  ■実験の対象ツール
   テレビ会議等の双方向でやり取りできるシステム

  ■実験の参加事業者
   社会実験前に国交省に事前登録した事業者

  ■実際の重要事項説明の流れ
   ①IT重説について相手方との同意(同意書の作成が必要)
   ②重要事項説明書の事前送付
   (テレビ会議で双方の手元に重要事項説明書を置く必要があるため)
   ③重要事項説明(実験中は検証を行うため録画・録音が必要)
   ④データ等の情報管理


 現時点では実験のためのガイドラインですので、導入された場合の実務との間に違いが
生じる可能性がありますが、このガイドラインを見る限り、まだまだ解決しなければならない
問題があるように感じます。


 例えば、IT重説を行うためには、双方ともに表情がわかる品質の映像と、内容が判別できる
音声が求められ、テレビ会議等に準じるシステムがあることが大前提となり、インターネット環境も
一定水準以上のものが必要になります。加えて、IT重説の実施についての同意書の取り交わし等も
必要になるため、少なからず手続きが増えることが想定されます。

 また、取引に携わる方の個人情報(お客様や宅地建物取引士)の管理についても解決すべき事項が
あるように感じます。この社会実験は検証の意味合いも含んでいるため、業者側に録画・録音が
義務付けられていますが、実際に導入された場合、録画・録音を行うのか、行った場合の情報管理を
どのように行うのか等検証事項がまだまだあるように感じます。


 今回の社会実験は賃貸取引と法人間取引に限定されていますが、個人を含んだ取引まで拡がって
実際に導入されるとなれば非常に便利だと思いますので、しっかりとした検証を行ったうえで導入されることを
期待しています。



ITを活用した重要事項説明に係る社会実験のためのガイドライン(国交省発表)
http://www.mlit.go.jp/common/001089583.pdf