ある疾患に罹り入院することになってしまいました。命にかかわるものではなく、手術の後はひたすら回復を待つというものなので、そこまでの悲壮感はありません。また、電子機器の持ち込みも制限されていないので、iPadやノートパソコンを持ち込んで、“ノマド”的に仕事をすることも可能です(さすがに手術直後で熱っぽく、あまり捗るものではありませんが)。

 さて、入院している病院は、県内においても私が患っている疾患の治療では高い実績を上げており、知っている人からは、「あー、あの病院なら間違いがないね」といわれるような病院です。確かにあれだけ痛かった私の疾患も今ではウソのように痛みが引いていますし、医師や看護師の皆さんも専門病院だけあって熱心かつシステマティックに治療を進めておられます。

 ただ、不動産に携わる人間からすると気になる点が一点だけあります。それは、病院の建物が旧耐震建物、すなわち昭和56年の建築基準法改正前に建築された建物であることです。院内は水回りが改修され清掃も行き届いており、決して不快感や不安感を抱くようなものではないのですが、昭和40年代に建てられたという病院の建物は、耐震改修が行われた気配はなく、万が一の場合のことが気にかかってしまうのです。

 おりしも、平成25年11月に「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」が改正され、病院、店舗、旅館等の不特定多数の方が利用する建築物及び学校、老人ホーム等の避難に配慮を必要とする方が利用する建築物のうち大規模なものなどについて、耐震診断を行い報告することを義務付け、その結果を公表することとなっています。

 仕事柄、いろいろな病院に出入りすることがありますが、それほど広くはない敷地で建て増しと一部取り壊しを器用に行っている病院、代替地を確保し一気に移転してしまう病院等方策は様々ですが、耐震性の確保は人々の命と健康を守る病院にとっては避けることのできない道であると思われます。

 私が入院している病院が、耐震改修促進法上、耐震診断結果の報告を求められる建物に該当しているかは不明ですが、耐震改修をするにせよ、移転をするにせよ、ハードルは極めて高いものと思われるものの、地元の方から愛され、信頼され続ける病院であり続けるためにはどこかで思い切った決断が必要になるのでは、とベッドの上で勝手に思っているところです。