なんともやるせない事件が起こりました。妻の遺体を自分が工事に携わった民家敷地に埋めた容疑で男が逮捕されたという事件です。


報道などによると、逮捕されたのは京都府長岡京市の大工の男(41歳)で、おととし9月初旬、当時工事で出入りしていた京都府南丹市園部町の住宅ガレージ下に、妻(当時37歳)の遺体を埋めた疑いがもたれています。この男は、警察に妻の捜索願いを出していましたが、不審に思った警察が男に問いただしたところ妻を埋めた容疑を認め、警察では殺人容疑も視野に捜査を進めているとのことです。


建物内で殺人事件や自殺があった、住人が孤独死し腐乱死体が見つかった、現在は更地になっているが以前火事があり焼死者が出た。こういった事情を抱える物件は「心理的瑕疵(かし)物件」と呼ばれます。「瑕疵」とは“見えない欠陥”というような意味合いで、心理的に何らかの欠陥を有する物件をいい、「事故物件」といわれることもあります。世の中にはそういった心理的瑕疵物件を地図上に表示するサイトも存在しています。そういった物件が売り出されたり賃貸に出されたりする場合、不動産広告には「告知事項あり」とか「心理的瑕疵あり」などと表示されます。


「心理的瑕疵」が物件の価値に与える程度は、それが土地なのか建物なのかや物件の立地、規模、建物の用途などによって変わってきます。筆者が東京で働いていたころ、赤坂見附にある外資系保険会社の名前を冠した超高層ビルに勤務していたことがあります。このビルが建っている土地では1982年に当時建っていたホテルで火災があり33名の方が亡くなっています。そのビルでは深夜一人で残業していると、妙な物音がするとかしないとか…。


このように地価が極めて高い東京都心部のような場所では、火事などで死亡者が出ても土地の価格に関してはさほど影響が出ないのではないでしょうか。それほど都心の土地は希少性が高いからです。一方、建物内部で殺人事件や自殺があった場合は、その部屋が賃貸マンションであれば次に貸す場合は大幅に安くしか貸せなくなることから物件価格は大幅に下がりますし、分譲マンションや一戸建て住宅では処分が難しくなる場合もあるでしょう。なお、賃貸住宅のオーナー向けにこういったトラブルがあった場合に備えるような保険も発売されています。


 それにしても冒頭の事件、自宅の敷地に遺体が埋まっていたとなっては、住み続けるにしても気分が悪いでしょうし、売却することも困難でしょう。犯人に対し損害賠償を請求することはできますが、犯人は刑務所の中、おそらく賠償に応じる資力はないでしょう。いたたまれない話です。