東京、大阪の二大都市にあって、その間に挟まれた名古屋にはないものがけっこうあります。世界最大の家具量販店であるIKEAがそうですし、三井不動産系の大型ショッピングモールであるららぽーとや子供向けの職業体験型テーマパークであるキッザニアも名古屋にはありません。もっとも、名古屋はクルマで遠出する人も多く、ポートアイランド(神戸)のIKEAやららぽーと甲子園のキッザニアに行ってきたよ、という話をまわりからよく聞いたりするので名古屋にこれらの施設がなくてもあまり問題はないのかもしれませんが…。

 そんな名古屋にあって、IKEAやららぽーとよりも地元民が待ち焦がれるものは東の東京ディズニーランド、ディズニーシーや西のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に匹敵するような大型のテーマパークかもしれません。確かに名古屋近郊の三重県長島町には地元が誇るナガシマスパーランドがありますが、どちらかというと富士急ハイランドのような『絶叫マシンの宝庫』的な位置づけであり、ディズニーやUSJとはちょっと違うなー、と思われる人も多いのではないでしょうか。

 しかし、名古屋の人以外にはあまり知られていない、というか、地元民でも知らない人もいるのかもしれませんが、名古屋にも大型テーマパークがオープンすることになりました。その名は「レゴランド・ジャパン」です。

 レゴランド・ジャパンは、デンマークの玩具メーカーであるレゴ社のブロックを使った屋外型のテーマパークで、同様の施設は欧米やアジアではマレーシアにありますが、日本国内では初となります(ただし、屋内型の小規模な施設は東京(台場)と大阪(天保山)にあります)。場所は名古屋市港区の金城ふ頭で、近くにはJR東海が運営するリニア鉄道館があります。最寄り駅は「あおなみ線」の金城ふ頭駅で、現在は各駅停車しか走っておらず、名古屋駅から約24分かかりますが、同区間を17分で結ぶノンストップの直行列車の運行計画もあるようです。また、伊勢湾岸自動車道の名港中央ICからも近く、広域的な集客にも便利な立地となっています。敷地面積は約13haで、2017年4月1日に先行して約9haの1期区域が開業、残りの4haについては2021年に開業する予定です。隣接地には名古屋市が5,000台を収容する駐車場を整備し、「レゴランドホテル」や複合型の商業施設も同時オープンする予定です。

 こうしてみると、なんだかすごいテーマパークがオープンするような感じがしますが、残念ながらディズニーやUSJとは比ぶべくもありません。2015年の入場者数でみると東京ディズニーランドが約1660万人で世界3位、入場者数約1360万人で世界5位の東京ディズニーシーを合わせた入場者数は約3000万人で世界1位となります。USJは約1390万人で東京ディズニーシーを抜いて世界4位に躍り出ています(上海ディズニーランドの出現により、今後順位が入れ替わるかもしれませんが。)。一方、レゴランド・ジャパンの想定入場者数は約200万人です。これは、他の国内のテーマパークでは、ハウステンボス(約280万人)と志摩スペイン村(約134万人)の間くらいに位置します。敷地面積でも東京ディズニーランド51ha、東京ディズニーシー49ha、USJ39haに対してレゴランド・ジャパンは9ha(1期区域)であり、規模の面でも大きく見劣りすることがわかります。また、ディズニーやUSJが数百億円規模の再投資を繰り返し新たなアトラクションを登場させていますが、レゴランド・ジャパンの場合、初期投資額が320億円とUSJの数あるアトラクションの一つに過ぎないハリーポッター(450億円)にも遠く及ばない金額であり、投資額の面でもインパクトに欠ける感があります。

 テーマパークにとってリピーター確保は最大の課題ですが、この点についてもレゴランド・ジャパンはやや不安があります。USJが“進撃の巨人”や“エヴァンゲリオン”などのアトラクションを登場させ、「映画のテーマパークじゃなかったの?」という突っ込みをよそに次々に新機軸を打ち出していますが、レゴランド・ジャパンの場合、『レゴ』というブロックのおもちゃをウリにするしかなく、対象年齢もせいぜい小学校高学年くらいまでとなり、老若男女の幅広い層から支持されているディズニーやUSJと比べると、果たしてどこまでリピーターを確保できるのかと心配になってきます。

 「観光不毛の地」と揶揄され、最近の報道でも全国主要都市の中で最も魅力のない都市との調査結果が出て話題となった名古屋ですが、そもそも、名古屋がなぜ魅力がない都市なのかということについて考えてみると、製造業で経済が成り立っている土地柄ゆえ、観光に依存する必要がなく、外から来る人のもてなす必要がない、悪い言い方をすると、よそ者に媚びる必要がない、という身も蓋もない理由に行きつきます。個人の主観に過ぎませんが、大阪に13年、東京に6年半住んだあと名古屋に住んでいる者の印象としては、飲食店などサービス業の従業員が最も愛想がないのは名古屋です。東京や大阪では店員の愛想がないな、と感じることはあまりないのですが、なぜか名古屋では頻繁にそういうことを感じます。そもそもそれで商売が成り立つのであればそれでよいのかもしれませんが、全般的に名古屋人のサービス精神のなさというか、よそ者をあまり受け入れたくないという閉鎖性が都市としての魅力のなさにも結びついているような気がします。

 名古屋がもう少し魅力ある都市に変貌するためには、レゴランド・ジャパンのようなハード面の整備だけではなく、もう少し外から来る人に対しておもてなしの心を持つ、といったソフト面での名古屋人ひとりひとりの意識改革が必要になるのではないでしょうか。そういった意味では、レゴランド・ジャパンの開業は新しいテーマパークの登場ということで、全国的にもそれなりに注目されるでしょうから、名古屋人の意識改革のよいきっかけになるのかもしれません。