名古屋市が昨年9月に公表した「都市ブランドイメージ調査」によると、全国主要8都市中「もっとも魅力に欠ける都市」に名古屋市が2回連続で選ばれました。この調査によると名古屋市を魅力的に感じると答えた人が3.5%であるのに対して、魅力に欠けると答えた人の割合が31.9%と調査対象となった8都市の中で最も魅力に乏しい都市とみられています。

それでは、名古屋はなぜここまで魅力がない街と思われているのでしょうか。思い当たるところとしては、さしたる観光資源がない、人々が閉鎖的で井の中の蛙的な人が多い、というところでしょうが、個人的には街並みが平板でつまらないということも名古屋を魅力がない街にしている一因だと考えています。特に街中に水辺やウォーターフロントがないという点が致命的であるように思われます。今回の調査で「行ってみたい」都市で最上位となった札幌も街中に水辺がありませんが、札幌の場合は観光都市というブランドイメージが確固たるものになっているのでさしたる問題にならないのかもしれません。2位以下の都市についてみると2位の京都は四条河原町あたりの鴨川や木屋町通りと高瀬川といった景観がパッと浮かびますし、3位の横浜はみなとみらいの岸壁と横浜ランドマークタワーを始めとした超高層ビル群、4位の東京区部はレインボーブリッジやお台場、5位の神戸は海に浮かぶ人工都市であるポートアイランドや六甲アイランド、6位の福岡は中州あたりの川辺の屋台、7位の大阪は道頓堀と派手なネオン看板や川辺に建つ中央公会堂など、いずれの都市も水辺とともにある都市景観というものが人々のイメージに刻み込まれているのではないでしょうか。

一方、名古屋にはこれといって水辺の景観が思い浮かびません。一応、街の真ん中を堀川という川が流れていますが、水量の関係でどぶ川の状態であり、そりゃ街のど真ん中をどぶ川が流れているような街に魅力なんてあるわけがないよな、となってしまいます。

そんな水辺に乏しい名古屋ですが、個人的に注目しているのが中川運河です。中川運河は名古屋港と旧国鉄の笹島貨物駅との水上輸送路として昭和初期に完成し昭和30年代頃まで頻繁に船が行き来していたそうです。その笹島貨物駅は既になく、現在では「ささしまライブ24」としてホテルや事務所が入る超高層ビルや大学、放送局や大型賃貸マンションなどが建ち並ぶ複合的な街に生まれ変わっています。このささしまライブ24の南側に中川運河の堀止があり、名古屋には珍しい親水空間となっています。現在は区画整理中で殺風景な空間ですが、都心部にある親水空間ということでこれを活かさない手はないと思います。

既に名古屋市が「中川運河再生計画」を策定し、ゾーニングにより各ゾーンの特性を踏まえた街づくりを進めることになっており、この堀止から南側の長良橋、東側の堀川との松重閘門までは「にぎわいゾーン」として位置づけられており、「ささしまライブ24 地区の開発と連携し、緑地・プロムナードの設置や、沿岸用地へのカフェ、レストラン等にぎわい施設の誘導、水上交通の運航などを展開して、運河の魅力と回遊性を高めるとともに、運河の歴史や文化・芸術を楽しむ市民活動の継続的な実施を通じ、都心地域に集まる人びとが訪れたくなるような『港と文化を感じる都心のオアシス』の形成」をめざすとしています。また、堀止の東側の市有地について、民間事業者のノウハウやアイディアを活用しようとサウンディング型の市場調査が実施されています。

名古屋市の市有地である「栄広場」について隣接地の所有者である大丸松坂屋グループと共同で再開発事業者を募るなど、名古屋市も民間事業者と共同で事業を行い街の魅力を高めていこうという姿勢が鮮明になっています。名古屋では貴重な親水空間である中川運河での取り組みは、果たして名古屋の魅力向上に資することになるのでしょうか。

◆ 参考URL

       名古屋市:平成30年度都市ブランド・イメージ調査を実施しました
        名古屋市:中川運河について

        名古屋市:中川運河堀止東側市有地の活用に係るサウンディング型市場調査について