先日、愛知県不動産鑑定士協会の研修会で「ホテルの評価について」というテーマでお話を伺う機会に恵まれました。その中で講師の方が仰っていたことで印象に残ったのが「名古屋には実質的に5つ星のホテルがない。最もグレードの高い『マリオット』にしても実際のところ3.5のグレード。名古屋に5つ星ホテルが進出すればホテルの構成としては完璧になる」というお話です。確かに今年6月、日本で初めて開催されることになった20カ国・地域(G20)首脳会合の開催地の選定においては、大阪、愛知・名古屋、福岡が名乗りを上げましたが、大阪で開催されることが決定しました。これは、各国の首脳級が宿泊するラグジュアリーホテルの充実度で大阪が群を抜いているということも選定理由となり、あらためて名古屋には高級ホテルが少ないという現状を認識させる結果となっています。

 都市規模の割に高級ホテルが少ないという状況を行政サイドも認識しており、名古屋市では高級ホテルを誘致するために他都市の実態を調査するとともに容積率の緩和特例や補助制度を設けることを検討しているとのことです。

 このような状況の中、米マリオット・インターナショナルのホテルブランドである『ザ・リッツ・カールトン』が名古屋・栄に進出を検討しているということが複数のメディアで伝えられました。

 リッツ・カールトンが進出を検討しているとされるのは、中区栄3丁目の明治屋ビルが建っている場所です。名古屋のメインストリートである広小路通りに面した一角で東側にはプリンセス大通りを挟んで現在は閉館し今後再開発が予定されている『丸栄』の跡地が存しています。明治屋ビルは現在、『ケンタッキーフライドチキン』が営業を続けていますが、このビルを取り壊した上で、隣接するコインパーキングと一体としてホテルを開設させるとのことのようです。

 ただし、メディアによって報じ方に差はあり、規定路線として報じている社や今後誘致する方向としている社などまちまちです。もちろんリッツ・カールトンサイドから正式なアナウンスがされているわけでもありませんし、もしかしたら開発者サイドがリッツ・カールトンサイドに誘致を持ちかけている段階、というところが実態なのかもしれません。

 そうはいっても街のリニューアルという面で名駅地区に後塵を拝してきた栄地区にとって非常にインパクトのあるニュースではないでしょうか。リッツ・カールトン誘致のニュースに先立って中日ビル建て替え後の具体的なイメージも公表されています。こちらにも三菱地所の子会社が運営する高級ホテル『ロイヤルパークホテル』が入居する予定です。5年後10年後、栄の街がどのように変化しているのかを想起させ楽しみです。