土地の取引を行う上で、土壌汚染調査を行う機会が増えてきました。

土壌汚染対策法(以下「土対法」といいます。)には、26種類の汚染物質が指定されていますが、土壌汚染の疑いのある土地に関し、実際には、毎回26種類すべての汚染物質の調査を行うことはしません。

土対法や、各自治体の条例等により、調査する汚染物質が決まっているからです。

また、土対法や各自治体の条例等で、土壌調査は、有害物質使用特定施設(以下「特定施設」といいます。)の廃止時や、3,000㎡以上の土地の形質の変更をするときなどを契機に行うことになっています。なお、土壌調査を行う際は、最初に、地歴の調査を行い、そもそも汚染物質を利用した経緯がなければ調査しなくてもよいことになっています。

しかし、土壌汚染がクローズアップされてから、法律で土壌汚染調査を求められていなくても、不動産売買で土壌汚染調査を行うことが増えてきました。これを自主調査と言います。

私は、自主調査の場合でも、汚染物質は絞った方が良いと感じています。それは、土対法の汚染物質の基準量というのは、過去に汚染物質を取扱していなくても、自然に汚染され、実際は基準量を超えることがあるからです。

土壌汚染調査を行い、汚染物質が見つかれば、自然由来の汚染物質であれ、汚染されているという記録は永久に残ることになります。

今回、私は、ある特定施設の廃止に伴う土地の取引を行いました。この特定施設は、地主が土地を貸してその上に特定施設が作られていました。地主は、特定施設として土地を貸す前に、土対法に規定されている26種類全ての汚染物質の調査をしていました。

その調査で、ヒ素とフッ素が土対法の基準を若干上回って発見されていました。それは自然由来レベルです。現場は海に近く、海水の影響等が考えられました。今回、特定施設の廃止に伴い、土対法により汚染物質の調査が行われたのですが、賃借人は、地下浸透を防ぐ施設にしており、汚染物質の漏れについての記録も作成していたため、特定施設が扱っていた物質に関して調査命令を受けませんでした。

しかし、過去の調査により、ヒ素とフッ素が確認されているため、地主が所有している土地の一部が、特定施設で扱っていた有害物質とは関係ない、砒素とフッ素に汚染されている土壌と判断され、形質変更時要届出区域に指定されることになりました。形質変更時要届出区域にある土壌は、実際には汚染されていなくても、汚染土として取り扱うことになり、処理費用など高額になりますので、取り扱いが大変になります。

今回の場合では、特定施設を建築するための土地として貸し出す前に、26種類の全ての汚染物質の調査を行うのではなく、地歴調査を行ったうえで、特定施設で取り扱う汚染物質の調査だけに絞っていれば、形質変更時要届出区域には指定されていなかったと思います。

このように、汚染物質の取り扱いなどしていなくても、海水の影響などを受け、自然に汚染されることがあり、その記録が、不動産の売買に影響を与えることがあります。むやみに土壌を調査するのではなく、土壌調査をする際は、物質を限定するなど対策が必要です。