先々週も当ブログで新型コロナウイルスについて触れましたが、依然として事態は悪化の一途をたどっています。224日に日本国内の専門家会議が「今後12週間が瀬戸際」との見方を示しましたが、それから2週間経過しようとしている現時点においても一向に収束の気配は見えません。この間あった大きな動きだけでも

   安倍首相が唐突ともいえる臨時休校の要請を打ち出し、全国の学校が休校に

   マスクは依然として入手困難、トイレットペーパーも品薄になるとのデマにより買い占めが発生

   IOC委員の一人が、事態が収束しなければ東京五輪の中止もあり得ると発言、東京五輪の予定通りの開催に懸念が生じる

   中国・韓国に対し事実上の入国制限の実施

   NY市場では株価が乱高下、日経平均株価も21000円を割り昨年9月以来の安値。円も急激に値を上げ、1ドル105円台に突入

など、歴史的ともいえる事柄が次々に起こっており、「コロナショック」といわれる、世界的なパニック状態に陥っています。

それでは、現時点において地価はどう動いているのでしょうか。弊社内の状況としては、売買契約や不動産決済は通常運転モードで行われており、また、新規に売り出した物件については多くの問い合わせをいただくなど、肌感覚としてはまだあまり影響は出ていない、というのが率直な感想です。

しかし、当然のことながら、個々の不動産の価格形成はマクロ経済の動向にも影響されます。また、その影響を受ける程度は住宅地・商業地・工業地といったエリアの違いによっても大きく異なります。例えば、インバウンドの影響によりここ数年で地価が急激に上昇した大阪ミナミの商業地などでは大きな反動減が予想されますし、実需に基づき売買される駅近くの一般的な住宅地ではそれほど影響を受けないかもしれません。

ならば、今現在の大阪ミナミの地価はどうなっている? と聞かれると正直回答は難しいのです。上場株式であれば、取引市場があり将来動向を織り込む形で株価が形成されますが、不動産にはそういった市場がないため、リアルタイムの地価を把握することが困難なためです。そのため、我が国では不動産鑑定評価制度が存在し、不動産鑑定士が合理的な市場を代行する形で不動産鑑定評価を行う、とされているのですが、鑑定評価を行うためには取引事例や取引件数の推移といった実証データに基づく定量的な分析が不可欠です。しかし、これらの実証データはリアルタイムでの入手が困難であり、データの入手までにどうしてもタイムラグが生じてしまいます。したがって、コロナショックのような急激なマクロ情勢の変化が起こった場合には実証データを入手するまでは、どうしても定性的な分析をせざるを得ない、ということになってしまいます。

個人的には、コロナショックはリーマンショックや東日本大震災に匹敵する「有事」だという認識なのですが、それが不動産市場にどこまでの影響を及ぼすかという点については判断できかねています。

 なお、公的な指標として国が発表する地価として「公示地価」があり3月下旬に発表されます。ただし、今回発表される公示地価の価格判定の基準日は令和211日であり、その時点では新型コロナウイルスの蔓延が顕在化していなかったため、新型コロナウイルスの影響は反映されていないものになります。現在の情勢からすると現実離れともいえる地価が発表されることから発表する国やそれを伝える報道機関はそのことを十分に周知する必要があると考えます(公示地価の発表の時点でコロナショックが収束しているとはあまり考えられないことから報道での扱いも小さくなるとは思われますが)。