賃貸マンション等の収益不動産の売却をお手伝いする際に、駐車場法に基づく
駐車場(「駐車場の附置義務」)台数が確保できていない、いわゆる遵法性が満
たされていない不動産をお見受けすることがあります。

駐車場の附置義務とは、駐車場法に基づき各自治体が条例によって定めるもの
で、一定の地区内において一定規模以上の建築物を新築する際は、一定の台数
を設けることが義務づけられた駐車場のことです。
この制度が制定された背景として、日本の高度経済成長にともない自動車保有
台数が増加し、歩行者が安心して歩ける空間の確保や道路交通を円滑にすると
いったこと等があげられます。


一般的に賃貸マンション等の収益不動産では、より採算性が見込める住宅戸
数を一戸でも多く確保し、極力駐車場台数を抑えるように計画されることがあり
ます。ただし、附置義務駐車場は建築確認の中でも審査され基準を満たしてい
なければ建築確認はおりず、当然検査済証も発行されませんのでどの建築物
も竣工当初は駐車場の附置義務台数は確保されています。


では、附置義務の台数が確保されなくなってしまうかというと、そもそも駐車
場は建築物の敷地内に設置することが原則となりすが、諸条件を満たしていれ
ば、敷地外駐車場(「隔地駐車場」)で必要台数が確保できていると判断されま
す。
その結果、収益性の高い都市部等においては、敷地外で駐車場台数を確保し
賃貸マンション等を建築する所有者がある一定数存在します。
また、当該建築物と敷地外の駐車場が同一所有者とは限らないため、敷地外
の駐車場が第三者の所有地である場合、土地所有者の都合で賃貸借契約等
が解除され、意図しないところで違法状態となってしまうことがあります。
また、賃貸マンション等の入居者の駐車場利用がなく一定期間空きが続いて
いる場合、不動産所有者側から賃貸借契約等を解除してしまうことも少なくあ
りません。
検査済証が発行された後は、各自治体への駐車場台数への報告義務等がな
いため、不動産所有者の駐車場の附置義務精度への意識が低く、また認識も
薄らいでいるためから発生するものと思われます。


人口の減少や利用者ニーズの変化を背景に自動車保有台数の伸びが鈍化し
ており、本来駐車場不足による問題を解決するために制定された駐車場の附
置義務が、逆に駐車場が過剰に整備されすぎているのではないか等の問題
提起もあり、自治体によっては制度の見直しに対する取組みもなされています。

ただ、駐車場の附置義務台数が足りず違法状態をなっている不動産の売却は、
遵法性を満たしていないことを理由に購入検討自体見合わせたり、また値引き
交渉が入ったりと売却活動が難航し長期化する可能性が高くなります。


不動産の売却を検討される際は、駐車場の附置義務に限らずご所有する不動
産が違法状態になっていないか等を専門家に相談・確認のうえ、売却活動され
ることをお勧めします。