先月末、三井不動産と竹中工務店が国内最大・最高層となる木造賃貸オフィスビルを、東京都中央区日本橋に建設するとの計画が発表されました。
木造賃貸オフィスビルの新築計画の特徴としては、
① 現存する木造高層建築物として国内最大・最高層となる、地上17階建・高さ約70m・延床面積約26,000㎡。
② 構造材に使用する木材量は、国内最大規模の1,000㎡超となる見込み。
③ 最先端の耐火・木造技術を導入。主要な構造部材には竹中工務店が開発した耐火集成材の「燃エンウッド」
を採用。
その他、床・仕上げ等、各所にも木材を積極活用。
④ 同規模の一般的な鉄骨オフィスビルと比較して、建築時のCO2排出約20%削減効果を想定。
等が挙げられており、概要は下記のとおりとなっています。
【物件概要(想定数値)】
所在地 :東京都中央区日本橋本町一丁目3番地
敷地面積 :約2,500㎡
用途 :事務所、店舗、駐車場 等
延床面積 :約26,000㎡
階数・高さ :地上17階・約70m
オフィス基準階面積 :約300坪(専有面積)
構造 :ハイブリッド木造
建築主 :三井不動産株式会社
設計予定者 :株式会社竹中工務店
竣工時期 :2025年予定
(https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2020/0929_02/)
また、2018年2月に住友林業からは「木造で高さ350m、地上70階の日本一の超高層ビルを東京・丸の内地区に建設する。」と壮大なビジョンが発表されており、構造は、木材(木質建材)と鉄骨材のハイブリッド造で、その比率は「9:1」となる構想。
(https://sfc.jp/information/news/2018/2018-02-08.html)
建物への木造技術が注目されるのは、持続可能(サスティナブル)な社会の実現に向け、森林資源と地域経済の循環の手段として木材の活用が求められており、建築資材として木を利用することで、大量の木材の活用が進められるとともに、建物の建築時のCO2削減にもつながるからです。
また、解決すべき課題も残っており、国土の約3分の1が森林で世界第2位の森林率(OECD加盟国)にもかかわらず、国産材の自給率は約3割にとどまっていることで、これは林業従事者不足とその高齢化、生産性の低さによる国産材の国際競争力低下等が起因し、伐採適期を迎えた木材や間伐のための伐採が実施できていないことも自給率停滞の一因となっています。
これらに対し 2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行され、状況改善の一環として公共建築物の木造化に力を入れ始めていますが、さらなる利用促進のためには民間企業の協力・連携が欠かせないのも現状です。
ただ、木造オフィスビルの建築は鉄骨オフィスビルと比べて建築費が数倍と嵩むため、事業採算性の観点からほどんど計画されることはありません。
循環型社会に向け建築資材としての木材の活用はますます注目されていますので、技術改新等により建築費が抑制されれば、近い将来、名古屋エリアで木造賃貸オフィスビルが見られるかもしれません。