令和3年5月20日に、国土交通省から
「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」 (案)が提示され、
パブリックコメント(意見公募)が開始されました。

この「心理的瑕疵」とは、不動産取引を行う際に、取引の相手方(買主や借主)
心理的な抵抗を感じさせる恐れのある事象のことです。
心理的瑕疵とされている代表的なものは、例えば対象の不動産において事件や自殺があった事実や、
近隣に嫌悪施設(火葬場や反社会的勢力の拠点等)がある等の事象となります。

こういった心理的瑕疵は、不動産取引における意思決定の重要な要素であり、
必ずその事実を告知し、その内容を承諾の上取引を行っていただきますが、
「どういった内容までが心理的に該当するのか」といった明確な規定はなく、
これまでの判例や取引の実務に合わせて、個別で判断されてきました。

明確な規定がないということは、
○何年前までの事象が心理的に該当するのか
○人の死については、どこまでが心理的瑕疵なのか。
○嫌悪施設はどういった施設を指すのか
という決まりがなく、中には十何年前の事象まで告知されているケースや、
そこまで深く告知されていないケースなど、対応がばらばらでした。

そういったことを無くすために、このガイドラインでは「人の死に関する心理的瑕疵」について
定めるための案が公表されました。
パブリックコメントを得て、正式なガイドラインになると思いますが、本ガイドラインの案では
①他殺、自死、事故死その他原因が明らかでない死亡が発生した場合 → 告知義務あり
②自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合 → 告知義務なし
 (長期間発見されない等、いわゆる特殊清掃等が行われた場合は告知義務あり。)
となっています。
今までであれば、①は当然として②も基本的に告知を行っていましたが、本ガイドラインでは
告知義務なしと定められています。

どのようなガイドラインになるかは、パブリックコメントを経て決定されますが、
いずれにしても、取引において十分な調査と、意思決定に必要な情報をご提供することは
変わりませんので、仮に②が告知義務なしとなったとしても、心理的瑕疵を気にされる方への
情報提供は怠らないように心がける必要があると感じます。

宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」 (案)