新型コロナウイルス感染症拡大の影響で停止していた外国人観光客の受け入れが6月10日、約2年ぶりに再開されました。ただし、感染拡大防止の観点から当面は添乗員付きのツアー客に限定されるとともにビザ発給の関係から実際に環境客が訪れるようになるのは1か月程度先になるとのことです。
新型コロナウイルス感染拡大による外国人観光客の受け入れ停止によるインバウンド需要の蒸発は、それまで外国人観光客の旺盛な消費需要に支えられてきた、観光地や歓楽街などに壊滅的な影響を与えました。
特に影響が大きかったのが外国人観光客の多かった大阪や京都などの関西圏です。
大阪を例にとってみると、大阪の代表的な商業地であるキタ(梅田地区)とミナミ(心斎橋・難波地区)を比べた場合、最高価格地点は長年キタで推移していたのですが、インバウンド需要が最高潮に達したコロナ禍前の数年間は外国人観光客の激増により賃料相場が高騰したミナミがキタを逆転していました。
それが、コロナ禍の襲来によるインバウンド需要の蒸発により年間40%以上上昇していたミナミの地価は同程度下落、国税庁は地価下落に伴う路線価の補正率を公表する事態にまで陥ってしまいました。
ワクチン接種が行き渡ったことなどもあり、新型コロナウイルス感染症の拡大はやや収束傾向にあるようにも見受けられます。このため「県民割」などによりまずは国内観光客の需要を増やす取り組みが今後広がっていきそうです。現に繁華街などではコロナ禍前と変わらない「にぎわい」を目にすることも多くなりました。
こういった状況のなかで再開された外国人観光客の受け入れ。1日あたりの入国者の上限は当面2万人程度となり、年間3000万人を超えていたコロナ禍前の水準と比べるとまだ微々たるものです。ただ、歴史的な円安水準にあることや日本の新型コロナの感染率が世界的に見ると低く「安全」なイメージがあることなどにより訪日ニーズの潜在需要は非常に高く、受入数の緩和条件次第では蒸発したインバウンド需要が徐々にですが回復していく可能性も考えられます。
今後、外国人観光客の受け入れ再開が地価に影響を与える場面もあるのではないかと考えます。注意深く見守っていく必要がありそうです。