不動産コンサルタントのつぶやき

名南財産コンサルタンツ 不動産事業部 公式ブログ

2020年03月

東京五輪・パラリンピック延期

昨夜(3月24日夜)、安部首相とIOCのバッハ会長は、東京五輪・パラリンピック
(以下「東京五輪等」といいます。)を1年程度延期することで合意し、事実上延期が決定しました。
そこで、色々な意見が出る前に、不動産という視点で、東京五輪等延期の影響を少し考えてみました。

以前から、東京五輪等終了後の不動産価格下落が懸念されていたからか、
それとも営業トークなのか、根拠は不明ですが“不動産価格のピークが継続する”と
前向きに捉えている人がいましたが、私は、むしろ悲観的です。
東京五輪等の特需を最も見込んでいたのは、インバウンド消費で潤っていた業種と推測され、
その多くは、既に新型コロナウィルスの影響により大きな打撃を受けており、
東京五輪等の延期が致命傷となる恐れがあると考えています。
例えば、東京都内のホテルの場合、東京五輪等開催期間の宿泊料金は、通常より高めに設定されているにも
関わらず、既に予約で多くの客室が埋まっている状態であり、東京五輪等を機に、何とか業績を回復させたい
と考えていたと思います。
しかし、本日以降、キャンセルが相次ぎ、そのほとんどは、キャンセル料が発生しないと推測しています。
ホテルとしては、キャンセルとなった客室を新たな予約で埋める必要がありますが、
現状下において、新たな予約を取ることは困難であり、上手く予約が取れたとしても、
その宿泊料金は、キャンセル前の料金を大きく下回る恐れがあります。
つまり、新型コロナウィルスの感染が終息し、客室稼働率が回復するまでは、体力勝負となるため、
体力(財務力)が劣り、1年が待てないホテルが現れてくると考えております。
これは、東京都内のホテルに限ったことではなく、また、ホテルに限ったことでもないと思います。
前記の通り、近年の不動産価格上昇を牽引してきたインバウンド消費関連業種の業績が悪化した場合、
その程度は分かりませんが、かなり高い確率で不動産価格は、下落すると考えています。
(事業用賃貸物件の賃料も下落すると考えています。)

なお、東京五輪等の現時点での延期決定については、賢明な判断であると考えています。

駐車場の附置義務について

賃貸マンション等の収益不動産の売却をお手伝いする際に、駐車場法に基づく
駐車場(「駐車場の附置義務」)台数が確保できていない、いわゆる遵法性が満
たされていない不動産をお見受けすることがあります。

駐車場の附置義務とは、駐車場法に基づき各自治体が条例によって定めるもの
で、一定の地区内において一定規模以上の建築物を新築する際は、一定の台数
を設けることが義務づけられた駐車場のことです。
この制度が制定された背景として、日本の高度経済成長にともない自動車保有
台数が増加し、歩行者が安心して歩ける空間の確保や道路交通を円滑にすると
いったこと等があげられます。


一般的に賃貸マンション等の収益不動産では、より採算性が見込める住宅戸
数を一戸でも多く確保し、極力駐車場台数を抑えるように計画されることがあり
ます。ただし、附置義務駐車場は建築確認の中でも審査され基準を満たしてい
なければ建築確認はおりず、当然検査済証も発行されませんのでどの建築物
も竣工当初は駐車場の附置義務台数は確保されています。


では、附置義務の台数が確保されなくなってしまうかというと、そもそも駐車
場は建築物の敷地内に設置することが原則となりすが、諸条件を満たしていれ
ば、敷地外駐車場(「隔地駐車場」)で必要台数が確保できていると判断されま
す。
その結果、収益性の高い都市部等においては、敷地外で駐車場台数を確保し
賃貸マンション等を建築する所有者がある一定数存在します。
また、当該建築物と敷地外の駐車場が同一所有者とは限らないため、敷地外
の駐車場が第三者の所有地である場合、土地所有者の都合で賃貸借契約等
が解除され、意図しないところで違法状態となってしまうことがあります。
また、賃貸マンション等の入居者の駐車場利用がなく一定期間空きが続いて
いる場合、不動産所有者側から賃貸借契約等を解除してしまうことも少なくあ
りません。
検査済証が発行された後は、各自治体への駐車場台数への報告義務等がな
いため、不動産所有者の駐車場の附置義務精度への意識が低く、また認識も
薄らいでいるためから発生するものと思われます。


人口の減少や利用者ニーズの変化を背景に自動車保有台数の伸びが鈍化し
ており、本来駐車場不足による問題を解決するために制定された駐車場の附
置義務が、逆に駐車場が過剰に整備されすぎているのではないか等の問題
提起もあり、自治体によっては制度の見直しに対する取組みもなされています。

ただ、駐車場の附置義務台数が足りず違法状態をなっている不動産の売却は、
遵法性を満たしていないことを理由に購入検討自体見合わせたり、また値引き
交渉が入ったりと売却活動が難航し長期化する可能性が高くなります。


不動産の売却を検討される際は、駐車場の附置義務に限らずご所有する不動
産が違法状態になっていないか等を専門家に相談・確認のうえ、売却活動され
ることをお勧めします。

週末の過ごし方

新型コロナウィルスに端を発した世界的な不況が現実的なものになり、
最近ではどこでもこの話題で持ち切りの状況です。

拡大防止のため、全国的に自粛ムードになっており、我が家も
不要の外出は避けるようにしています。
家にいればやることはあるのですが、外出に制限がかかると
正直つらいなと感じています。
不動産関連で見ても、例えばモデルルーム等の来場数も減少しているとの
声も多く聞こえます。
また、コロナウィルスの影響で、住宅設備機器の部品(主にゴム製品等の取り付け用製品)が
中国から納品されず、浴槽等が取付できないため、建物の竣工時期が遅れているとの
話も聞くようになりました。

そういった暗い状況の中でも、ニュースも明るい話題を探しているのか、
この状況下なので、室内で楽しめるものが、通常より売れているとのニュースがありました。
例えば室内で体を動かすための器具(バランスボール等)などは、
通常の1.5倍の売れ行きだそうです。
また、公園の人出も例年より多く、にぎわっているとのニュースも聞きました。
散歩に行くと、いつもより人が多いなと実感することが多くなっています。
また、こういう状況下では2017年から運用が開始されたIT重説も重宝されるかもしれません。

早く沈静化することを祈るばかりですが、自分なりに工夫した過ごし方を
考えていこうと思います。
(我が家ももっぱら外出は愛犬との散歩です。)

新型コロナの影響で地価はどうなる?

先々週も当ブログで新型コロナウイルスについて触れましたが、依然として事態は悪化の一途をたどっています。224日に日本国内の専門家会議が「今後12週間が瀬戸際」との見方を示しましたが、それから2週間経過しようとしている現時点においても一向に収束の気配は見えません。この間あった大きな動きだけでも

   安倍首相が唐突ともいえる臨時休校の要請を打ち出し、全国の学校が休校に

   マスクは依然として入手困難、トイレットペーパーも品薄になるとのデマにより買い占めが発生

   IOC委員の一人が、事態が収束しなければ東京五輪の中止もあり得ると発言、東京五輪の予定通りの開催に懸念が生じる

   中国・韓国に対し事実上の入国制限の実施

   NY市場では株価が乱高下、日経平均株価も21000円を割り昨年9月以来の安値。円も急激に値を上げ、1ドル105円台に突入

など、歴史的ともいえる事柄が次々に起こっており、「コロナショック」といわれる、世界的なパニック状態に陥っています。

それでは、現時点において地価はどう動いているのでしょうか。弊社内の状況としては、売買契約や不動産決済は通常運転モードで行われており、また、新規に売り出した物件については多くの問い合わせをいただくなど、肌感覚としてはまだあまり影響は出ていない、というのが率直な感想です。

しかし、当然のことながら、個々の不動産の価格形成はマクロ経済の動向にも影響されます。また、その影響を受ける程度は住宅地・商業地・工業地といったエリアの違いによっても大きく異なります。例えば、インバウンドの影響によりここ数年で地価が急激に上昇した大阪ミナミの商業地などでは大きな反動減が予想されますし、実需に基づき売買される駅近くの一般的な住宅地ではそれほど影響を受けないかもしれません。

ならば、今現在の大阪ミナミの地価はどうなっている? と聞かれると正直回答は難しいのです。上場株式であれば、取引市場があり将来動向を織り込む形で株価が形成されますが、不動産にはそういった市場がないため、リアルタイムの地価を把握することが困難なためです。そのため、我が国では不動産鑑定評価制度が存在し、不動産鑑定士が合理的な市場を代行する形で不動産鑑定評価を行う、とされているのですが、鑑定評価を行うためには取引事例や取引件数の推移といった実証データに基づく定量的な分析が不可欠です。しかし、これらの実証データはリアルタイムでの入手が困難であり、データの入手までにどうしてもタイムラグが生じてしまいます。したがって、コロナショックのような急激なマクロ情勢の変化が起こった場合には実証データを入手するまでは、どうしても定性的な分析をせざるを得ない、ということになってしまいます。

個人的には、コロナショックはリーマンショックや東日本大震災に匹敵する「有事」だという認識なのですが、それが不動産市場にどこまでの影響を及ぼすかという点については判断できかねています。

 なお、公的な指標として国が発表する地価として「公示地価」があり3月下旬に発表されます。ただし、今回発表される公示地価の価格判定の基準日は令和211日であり、その時点では新型コロナウイルスの蔓延が顕在化していなかったため、新型コロナウイルスの影響は反映されていないものになります。現在の情勢からすると現実離れともいえる地価が発表されることから発表する国やそれを伝える報道機関はそのことを十分に周知する必要があると考えます(公示地価の発表の時点でコロナショックが収束しているとはあまり考えられないことから報道での扱いも小さくなるとは思われますが)。
アーカイブ
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

  • ライブドアブログ