相続する財産の中に、土地を借りて建てた建物が含まれていることがあります。
この場合、相続する権利は建物の所有権のほかに、土地の「借地権」も併せて相続することになります。
この「借地権」とは、建物の所有を目的として、他の方から土地を借りて利用する権利のことをいいます。(土地賃借権と言われることもあります。)
したがって、土地の地主様に対して、「借地権」を相続することについて承諾が必要かと疑問になるかと思います。この「地主様からの承諾」については、結論から申し上げますと承諾をいただく必要はありません。ただし、「土地の借地権を相続しました。」という通知をしたうえで、できれば土地の賃借人が変わったことを確認する書面を取り交わしたほうが良いでしょう。
これで地主様との関係は問題ありませんが、「借地権」を地主様以外の第三者へ主張するために、「借地上の建物の所有権登記」がされているか確認する必要があります。なぜなら、借地権を明確にする方法が定められており、その要件を満たしていないと「借地権」の所有を第三者に対抗できないためです。
まず、借地権を明確にする方法として、「その土地へ借地権を登記」する方法があります。ただし、この借地権の登記は地主様の承諾が必要であり、実務上承諾をいただけることは少なく、登記されていないことが一般的です。
(土地の登記簿謄本に借地権の登記の有無が記載されています。こちらも確認されたほうがよいでしょう。)
(土地の登記簿謄本に借地権の登記の有無が記載されています。こちらも確認されたほうがよいでしょう。)
そこで、これに代わる借地権の明示として、「借地上の建物の所有権登記」があります。土地上の建物を所有していることを登記することで、借地権があることを主張できます。
例えば、借地権の登記をしていない状態で、その土地を購入した他の方が、その土地の明け渡しを求めてきた場合、建物の所有権登記がされていれば、借地権を主張することができ、逆に建物の所有権登記がされていない場合は、その方へ借地権を主張することができないことになります。
上述のことをまとめると、「地主様が他の人へ土地を売却した場合に、その人に借地人(借りている方)が借地権を主張する」ためには、借地権の登記を行うか、借地上の建物の所有権登記を行うことが必要です。
したがって、登記をしないと「第三者へ対抗できない」ことになりますので、相続による借地権もしくは建物の所有権移転登記は行う必要があります。
(なお、借地権を相続するにあたり、その建物に居住している必要はありません。あくまで「建物所有を目的とした土地の借地権」なので、建物を相続で所有することになり、一緒に借地権も相続できます。)