名古屋市が木造復元を進める名古屋城天守閣について、エレベータを設置しない方針で障
害者団体と衝突しており問題となっています。
名古屋城天守閣は1945年の空襲で焼失してしまいましたが、戦後、多大な寄付により鉄骨
鉄筋コンクリートで再建されました。それから半世紀が経過したことにより、設備の老朽化や
耐震性の確保に問題が発生しています。そのような課題を克服するとともに、昭和実
測図や金城温古録(きんじょうおんころく)などの貴重な資料が残されていることから、
特別史跡名古屋城跡の本質的価値の理解を促進するために木造での復元を行うそうです。
名古屋市の河村たかし市長は、史実に忠実な復元をするためにエレベーターは設置しない
ということを主張しています。
一方、障害者団体側は障害者差別解消法を理由にエレベーターの設置を求めております。
また、大村秀章愛知県知事も「基本的人権を尊重すべき」である、と県として対応を検討
する方針を示しています。
他の城では、江戸時代から現存して国宝に指定されている姫路城や松本城などにエレベー
ターはありませんが、戦後再建された大阪城にはエレベーターが設置されています。
また、修繕中の熊本城では元々エレベーターはありませんでしたが、今回の修繕に際し、エレ
ベーターを設置するとのことです。
熊本城の例を考えると、建て直す際にエレベーターを設置しないということはバリアフリ
ーや多様性という世界的な潮流に反していると言えるかもしれません。
しかしながら、上記の資料が残る名古屋城天守閣は、史実に忠実に復元ができる唯一の城
であるとも言われています。この文化的価値をエレベーターの設置によって損ねることが
あってもいいのかという考えも理解できます。
名古屋市側と障害者団体側の双方が納得できるような着地点が見つかることを願います。