災害
防災・美観の観点からも無電柱化の普及は大切な取組みであるため、無電柱化の取組みや
不動産取引の現場では、取引時にハザードマップを示して重要事項として情報を提供す
ること等が義務化されています。
ハザードマップは、水防法に基づいて国、あるいは都道府県がそれぞれ管理する河川に
ついて洪水浸水想定区域を指定し、それを基に市町村が作成したもので、想定の前提を
「1000年に一度、想定しうる最大降雨」とし、危険を図化したものとなっています。
近年、大雨や短時間強雨(1時間に50㎜以上の降雨)の発生は増加傾向にあり、河川から
離れた地域でも水害が起こる可能性もあるため、ハザードマップを確認することの重要
性は増してきていると思われます。
東日本大震災以降、水害だけでなく土地の地歴や成り立ちに関する情報も手軽に調べら
れるようになりました。一度は見て欲しいサイトとしては、(1)「ハザードマップポ
ータルサイト(国土交通省)」と(2)「今昔マップ on the web」なります。
(1)は、各自治体が作成している各種のハザードマップへのリンクが貼られており、
それを見るとその地域にどのような危険が想定されるのかが確認できます。
〇『ハザードマップポータルサイト』:https://disaportal.gsi.go.jp/
(2)は、現在の地図と明治時代からの地図を2枚並べて見ることができます。
2つを並べ順に時代を遡っていけば、自分が住もうとしている(住んでいる)土地に過
去に何があったか、埋め立てや造成等の改変がいつごろ行われたのかが確認できます。
また、旧版地図だけでなく、色別標高図(標高がわかる)、治水地形分布図(平野部河
川流域の詳細な地形がわかる)、シームレス地質図(土地の成り立ちが分かる)等を並
べたり、重ねたりすることもでき、精度の問題はあるにせよ特定の土地の過去を探るの
に必要な情報がほぼまとめられています。
〇『今昔マップ on the web』:https://ktgis.net/kjmapw/
安全は人に頼ったり任せたりするものではないため、自分自身で情報を確認し、いつ起
こるかわからない自然災害への防災意識を高めて行ければと思います。
公表された図をもとに今後、市町村において、高潮ハザードマップの作成が行われます。宅地建物取引業者は作成されたハザードマップの内容について、重要事項説明書に記載し、取引の相手方に説明することが義務付けられています。
さて、高潮について、簡単なイメージをすることはできたのですが、詳しくは知りませんでした。愛知県が公表した資料を一通り読みましたので、以下でご説明します。
高潮とは、台風などの気象の乱れにより発生する潮位の上昇現象。台風や発達した低気圧が通過するとき、潮位が大きく上昇することがあり、この現象を「高潮」といいます。高潮の原因は大きく2つあり、①気圧低下による吸い上げ効果と②風による吹き寄せ効果です。
①気圧低下による吸い上げ効果・・・台風や低気圧の中心では気圧が周辺より低いため、気圧の高い周辺の空気は海水を押し下げ、中心付近の空気が海水を吸い上げるように作用する結果、海面が上昇すること。
②風による吹き寄せ効果・・・台風や低気圧に伴う強い風が沖から海岸に向かって吹くと、海水は海岸に吹き寄せられ、海岸付近の海面が上昇すること。この効果による潮位の上昇は風速の2乗に比例し、風速が2倍になれば海面上昇は4倍になります。
愛知県が公表した高潮浸水想定区域図には、日本に既往した最大級の台風である室戸台風級(中心気圧910hpa、半径75㎞、速度73㎞。発生確率:500年~数千年に1度)が上陸し、想定し得る最大規模の高潮が発生した場合の被害について記載されています。なお、高潮浸水想定区域図は、1959年に発生した伊勢湾台風と同程度の台風による被害も想定されていますが、想定される被害は、室戸台風級>伊勢湾台風級とのことですので、いかに最悪の事態を想定しているのかが分かります。
高潮浸水想定区域は、津波災害警戒区域よりも被害を受ける地域が広大であるように思います。海から離れたところでも高潮の被害が想定されています。しかし、台風は発生したことや進路などを気象庁が発表しますので、被害が想定される場合、台風が上陸するまでに避難することは可能な気がします。
高潮浸水想定区域もそうですが、いろいろなハザードマップが公表されていますので、自宅がどのような地域に建っているのか、どのような災害が想定されるかなどを確認し、被災した場合のことなど、定期的に家族と話し合われてはいかがでしょうか。
2021年3月11日、東日本大震災から10年という節目を迎えました。あの日のあの時間、自分がどこでなにをしていたのかを克明に思い出された方も多いのではないでしょうか。
この10年で変わったこと変わっていないこと様々だと思いますが、情報通信機器の進化という点では大きく変貌を遂げたのではないでしょうか。
個人的な話になりますが、携帯電話端末、今でいうガラケーからスマートフォン(iPhone4)に切り替えたのが2011年11月のことでした。したがって、東日本大震災が発生した時点ではスマートフォンを所持していなかったということになります。
総務省が公表している「令和2年 情報通信白書」によると情報通信機器の世帯保有率のうちスマートフォンの普及率についてみると、2010年が9.7%、2011年が29.3%であったのが最新の調査時点である2019年では83.4%まで伸長しています。
今や電車に乗っても老若男女、猫も杓子もスマートフォンの画面に見入っており、スマートフォンへの依存度が高い人が多いような気がします。
かくいう筆者も、腕時計型の活動量計とスマートフォンを連動させて歩数や心拍数を常にモニタリングしていますし、読書もKindleのアプリですることが多く、文庫本を持ち運ぶことがなくなりました。また、趣味の登山ではGPSと連動した詳細な地形図が道迷いを防いでくれたり、スキーの際は滑走距離や速度を全て記録してくれたりと日常生活のありとあらゆる場面でなくてはならないものになっています。
それでは、再度東日本大震災のような大地震に襲われたような場合でもスマートフォンがあれば万全なのでしょうか?
確かに災害時、電話回線がパンクしてしまってもLINEなどの代替となる通信アプリや災害伝言ダイヤルもありますし、ニュースサイトではライブ映像の配信も当たり前になりました。また、NHKのアプリを入れていればテレビがなくても最新のニュース映像で情報を収集することができます。
ただ、これらはあくまで「基地局が機能している」ということが前提になります。東日本大震災のときのように津波により基地局の機能が奪われるというようなことがあれば4Gや5G回線を使うことができず、スマートフォンもその機能を十分に発揮できないという事態が生じることも想定されます。
思えば、当時のガラケーにはワンセグ機能が搭載され、テレビを観ることができる機種が多かった覚えがあります。ワンセグは通信回線を使用しないのでバッテリーさえ残っていればテレビの情報を収集することができます。しかし、現在のスマートフォンではワンセグ機能を搭載している機種はほとんどなくなってしまいました。 ※外付けのチューナーを接続すればワンセグやフルセグの視聴は可能
現在では災害時に誰でも使える無料Wi-Fiである『00000JAPAN』という公衆無線LANサービスも提供されるので、災害時に全く通信ができなくなるという心配は杞憂なのかもしれません。
ただ、携帯ラジオなど何らかの情報収集手段は手元に置いておいたり、予備のバッテリーを多めに確保したりと、万が一の場合への備えは多ければ多いほどよいと今回あらためて思いました。
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