不動産コンサルタントのつぶやき

名南財産コンサルタンツ 不動産事業部 公式ブログ

災害

水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化

本日(7月17日)、不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を
事前に説明することを義務付けることとする宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する命令が
公布されました(施行日:8月28日)。

九州地方・中部地方など日本各地で発生している令和2年7月豪雨等、近年、大規模水災害の頻発
により甚大な被害が生じており、水害リスクに係る情報が不動産購入の意思決定を行う上で、
重要な要素の1つとなりつつあります。よって、法改正により、不動産売買契約の締結前に行う
重要事項説明の項目に、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明が追加されました。

弊社では、数年前から、市町村のホームページに掲載されているハザードマップを重要事項説明書の
添付資料に加え、対象物件の所在地を説明してきました。ちなみに、弊社がある名古屋市内の不動産
の場合、浸水実績図及び洪水・内水ハザードマップに加え、地震と津波のハザードマップを添付し、
その所在地を説明しています。

一般的に、重要事項説明は、契約条件が合意した後に行いますので、実際には、不動産探しを
始める初期段階で、ハザードマップについて説明し、対象エリアを検討していただく必要があります。
※初期段階での明確な義務化が困難なため、重要事項説明項目への追加になったと解釈しています。

上記は非常に良い事でありますが、現在、水害リスクの高いエリアにお住まいの方にとっては、
更に選択肢が狭まれることになるかもしれません。
現実は残酷だと思えてきました。

国土交通省HP
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000205.html

名古屋市浸水実績図
http://www.city.nagoya.jp/ryokuseidoboku/page/0000021585.html

名古屋市防災マップ
http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/405-5-8-0-0-0-0-0-0-0.html


新幹線車両基地とハザードマップ

 10月12日19時前に静岡県伊豆半島に上陸した台風19号は関東甲信越地方を中心に甚大な被害をもたらしました。各地で浸水被害が相次ぎ、特に千曲川が決壊した長野市では、JR東日本の長野新幹線車両センターが水没し、新幹線車両10編成が水に浸かってしまいました。

 長野市のハザードマップを見てみると、この車両センターは千曲川と浅川という河川に挟まれた地形的に低い場所にあり、洪水による浸水が最も想定される場所に立地しているようです。そもそも平地が少ない善光寺平(長野盆地)にあって広大な平坦地を確保できる場所が限定されるが故、洪水が頻発するような場所に車両基地を設けなければならなかったものと推察されますが、新幹線車両が水没する映像は衝撃的なものでありました。


 水没した車両はJR東日本所属のE7系が8編成、JR西日本所属のW7系が2編成の計10編成で、これは北陸新幹線で運用される全車両のうち約3分の1にあたるとのことです。新幹線車両の場合、床下に動力・制御機器があり、エレクトロニクス技術の結晶のような高度な電子機器が搭載されていることから水没した車両が果たして復活できるのかは不明ですが、仮に廃車となった場合、1編成30億円以上の新幹線車両が10編成で300億円以上の損失ですし、北陸新幹線が長期間運休し、首都圏と北陸方面の旅客流動が阻害されることによる経済損失はさらに大きなものとなるかもしれず心配が募ります。


 最後になりますが、今回の台風で被害を受けられた皆様にお見舞いを申し上げるとともに一日も早く復旧・復興がなされることをお祈り申し上げます。


参考URL:長野市洪水ハザードマップ(古里・柳原・浅川・朝陽・若槻・長沼・豊野地区周辺)

東京都耐震マーク表示制度

最近知ったのですが、東京都では耐震性のある都内全ての建築物を対象にマークを
無料で交付しており、そのマークには3つの区分があります。

「新耐震適合」・・・昭和56年6月以降に建てられた建築物
「耐震診断済」・・・旧耐震建築物で耐震診断等により耐震基準への適合を確認したもの
「耐震改修済」・・・旧耐震建築物で耐震改修により耐震基準への適合を確認したもの

それぞれの申請には、下記の何れかの書類が必要となります。

「新耐震適合」・・・①検査済証
                        ②台帳記載事項証明書(完了検査日の入ったもの)
               ③確認済証、施工内容証明書(建築士の署名・押印のあるもの)
               ④台帳記載事項証明書、施工内容報告書(建築士の署名・押印のあるもの)

「耐震診断済」・・・①耐震診断助成額確定通知書、耐震診断結果報告書
               ②耐震判定団体の耐震診断結果報告書
               ③耐震診断結果、耐震改修実施報告書(建築士の署名・押印のあるもの)
               ④旧建築基準法第38条の大臣認定書

「耐震改修済」・・・①耐震改修助成額確定通知書
               ②耐震改修促進法第8条第3項の規定に基づく計画認定書、工事請負契約書
               ③耐震判定団体の補強設計判定書、工事請負契約書
               ④耐震診断結果・耐震改修実施報告書(建築士の署名・押印のあるもの)

他でも東京都と同様の制度があるのか?については把握しておりませんが、
東京都耐震マーク表示制度により、旧耐震建築物の耐震診断及び耐震改修は、少なからず、
促進されていると思います。

なお、当たり前のことですが、東京都のHPには、建築物の所有者、管理者の申請に基づき、
その内容を確認し、マークを交付するもので、建築物の耐震性を保証するものではありませんと
記載されています。
やはり、最終的には、ご自身の判断で慎重に不動産取引を行っていただくことになります。

東京都耐震ポータルサイト http://www.taishin.metro.tokyo.jp/tokyo/labeling_system.html

東日本大震災被災地のいま

 先週末、業界のある会合が福島であったため、金曜日から休みを取り、駆け足ですが、東日本大震災の被災地を回ってきました。ニュースなどで取り上げられることも多い被災地の現状ですが、遠い場所に住んでいると実感を伴わないことも現実です。しかし、今回現地を訪問し、あらためて震災の爪痕の大きさに思いを新たにしました。不動産業界に身を置く者が見た福島の現状について写真を交え報告したいと思います。


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仙台空港でレンタカーを借り、まず訪れたのが宮城県の女川町です。隣接する石巻市と比べると復興が遅れているということを聞いたため、実際のところどうなのだろうと思いやってきました。確かに、高台では造成が盛んに行われており、今なお復興途上であるということを強く印象づけられました。


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2015年12月にオープンした商業施設「シーパルピア女川」。第三セクターのまちづくり会社が運営するテナント型の商店街で、水産物を中心とした物販飲食施設が入居しています。話題の「ダンボルギーニ」も展示されています。なるべく地元貢献しようと2300円の海鮮丼を食し、お土産のかまぼこを自宅に送りました。



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商店街内の観光案内所には、震災当時の津波の写真が展示されていました。訪問した日は風もなく海は凪いでいたため俄かには信じがたいのですが、この場所で起こった現実です。


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駅も津波に流されたため、新しくなっていますが、駅自体少し高台に移転したとのことです。温泉施設も併設されているため、お湯に浸かってゆっくりしたかったのですが、先を急ぎます。


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女川町の中心部から10km以上走った山中ですが、大掛かりな造成が行われています。


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津波で84人もの児童・教職員が犠牲となった大川小学校。被害を受けた校舎がそのまま残されています。正直、言葉が出ませんでした。


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なお、大川小学校では、亡くなった児童の遺族の一部が石巻市と宮城県を被告として23億円の損害賠償を求める訴訟を提起し、昨年10月に仙台地裁が市と県に約14億円の賠償を命じる原告勝訴の判決が言い渡されています(原告、被告双方が控訴)。個人的にはこの判決については疑問を感じていたのですが、実際に現地に行ってみると、学校の裏山は子供でもなんとか登れそうな斜度であり、確かに教職員はなぜ子供たちを山に避難させなかったのか、という疑問が沸いてきました。


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翌日、福島在住の方に福島第一原発周辺を案内いただきました。福島第一原発から約5kmにある浪江町の両竹地区。一般人が近づけるのはこのあたりが限界です。道路が大きく屈折してしまっており震災の威力の大きさを感じさせます。


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分かりにくいですが、この場所からは福島第一原発の煙突やクレーンが遠望できます。


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木造建物は津波で流されてしまったため、鉄筋コンクリートの建物の遺構がポツリポツリと点在しています。かなりショックを受ける光景です。


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富岡町の桜の名所である「夜の森の桜並木」。このあたりも避難指示が4月1日に解除されたばかりの場所です。


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桜並木を歩いていくと、帰還困難区域のゲートに行き当たります。これより奥は放射線量が非常に高いレベルにあり、立ち入りが厳しく制限されています。


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帰還困難区域内では、建物も荒れ放題になっています。なお、帰還困難区域内では、公示地価などは調査が休止となっています。


被災地を訪問した4月14日は熊本の震災からちょうど1年の節目の日でした。日本という国に住んでいる限り、震災もそうですし、その他の災害も含め、自然の脅威からは無縁ではいられない。東日本大震災の被災地を訪問し、そういったことをあらためて強く認識しました。

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