不動産の仕事に関わる者にとって、現地での物件調査時に写真撮影は欠かすことのできない作業です。特に不動産鑑定の業務では、報告書(不動産鑑定評価書)に現況写真を添付しますし、評価の作業を行う際に現地の状況を再確認するため、多めに写真を撮影します。
筆者が不動産の世界に入ったころはまだデジタルカメラが普及しておらず、フィルムカメラを用いていましたが、フィルム代や現像代、プリント代がそれなりにかかるためあまり枚数を撮ることができませんでした。役所関係の評価で1日に数十地点の物件調査を行うこともあったのですが、1地点につき2枚と決めて、36枚撮りのフィルムを何本も持って現地を回っていました。事務所に戻る前にDPEショップに毎度毎度寄る必要もありました。また、プリントされた写真は糊や両面テープで台紙に貼り報告書に添付していました。建物が大きい場合など、1枚の写真で収まらない場合は、連続で数枚撮った写真をカッターで切り貼りしてパノラマ写真にするというような作業も行っていました。
こういった作業もデジタルカメラを導入してから劇的に変化しました。まずコストを気にせずに何枚でも写真を撮ることができるようになりましたし、パノラマ写真もフォトショップ(写真加工ソフト)を使えば自動で作成できるようになりました。
ただ、現地で写真を撮る際は注意が必要なことは今も昔も変わりません。建物に向かって写真を撮っていると近所の方から怪しまれることがままあります。不動産仲介の業務であれば、「ここ売りに出すの?」と商談に発展することもありますが、不動産鑑定の場合、秘匿で動くこともあるため写真撮影はなるべく手短に済ます必要があります。
筆者自身ではありませんが、ある場所を撮影するために隣の建物の階段に入り込んで写真を撮っていたら外から鍵を掛けられ閉じ込められた挙句、警察を呼ばれたという話を聞いたことがあります。厳密にいえば、他人の土地に勝手に入り込んで写真を撮影することは不法侵入にもなるので厳に慎まなければなりません。
長年の写真撮影の賜物か、なるべく怪しまれずに写真を撮る術は身につけているつもりなのですが、どこに落とし穴があるかわかりません。そんなことを考えながら今日も現地の写真撮影を続けています。