去る10月21日、平成28年度の不動産鑑定士試験の合格者が発表され、めでたく103名の方が関門を突破されました。

 ここで、不動産鑑定士試験の概要を見てみましょう。試験は2段階で行われ、まず5月中旬に短答式試験が行われます。受験資格は、年齢、学歴、性別、国籍を問いません。科目は「不動産に関する行政法規」と「不動産の鑑定評価に関する理論」の2科目で試験時間は各科目120分です。総合点で概ね7割が基準とされているとともに科目ごとに一定の得点が必要とされています。

 短答式試験に合格すると次は論文式試験です。試験は7月下旬~8月上旬に3日間にわたって行われます。科目は「民法」「経済学」「会計学」(この3科目は『教養3科目』といわれています)と「不動産の鑑定評価に関する理論」です。教養3科目については科目ごとの出題数は2問、試験時間は120分です。「不動産の鑑定評価に関する理論」については論文問題が4問(試験時間は120分+120分)、演習問題が1問(試験時間は120分)です。総合点で概ね6割が基準とされているとともに科目ごとに一定の得点が必要とされています。なお、1度短答式試験に合格すると、その合格した年の論文式試験で不合格となった場合でも、合格した短答式試験の合格発表日から2年以内に行われる短答式試験が申請により免除になります。

 合格率を見てみると、短答式試験の合格者は、受験者数1,568人に対して511人であり約32.6%、論文式試験の合格者は受験者数708人に対して103人であり約14.5%となっています。

 この14.5%という合格率は、短答式試験に合格した人の中で論文式試験に合格した人の割合であることから、かなり狭き門であるということがわかります。特に専門科目である「不動産の鑑定評価に関する理論」については相当深い知識とアウトプット力が必要とされています。したがって、受験生は平日2~3時間、休日は6~8時間程度の勉強を1~2年続けることが一般的です。

 しかしながら、不動産鑑定士に限らず、他の「士業」と呼ばれる資格にも共通しているのですが、近年、受験者の減少が問題となっています。これは、上記のように勉強漬けの日々を続け、念願かなって資格を取得したところで、『食えない』ということがいわれるようになり、受験者の中心である若年層を中心に「資格取得のコストパフォーマンスが悪い」という考えが広がったことも一因としてあるのかもしれません。

 不動産鑑定業界も高齢化が進んでおり、団塊の世代が一線を退く近い将来には資格者の数が一気に減ってしまいます。そもそも不動産鑑定士は資格者数が7千人台と他の士業に比べて少ない(例:弁護士は約3.6万人、税理士は約7.5万人)資格でもあり、優秀な若手を確保しないことには業界の存亡にも関わってくることにもなりかねません。

 そのような中、不動産鑑定士の資格者団体である公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会や各地域の不動産鑑定協会によって不動産鑑定士という資格を知ってもらおうという様々な試みが行われているので紹介させていただきます。このような取り組みによって多くの方に不動産鑑定士という資格に興味を持ってもらえるといいな、と思っています。


■ オープンセミナー「誰かの役に立ちたい×不動産鑑定士という選択」
 (主催:国土交通省・早稲田大学・公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会)
   http://www.fudousan-kanteishi.or.jp/info/news/semnar1108/

■ 不動産鑑定士PR動画コンテスト
 (公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会 )
   http://www.fudousan-kanteishi.or.jp/info/contestresult/

■ 公益社団法人 大阪府不動産鑑定士協会 社団化20周年記念行事「不動産鑑定士への道」
   http://www.rea-osaka.or.jp/kinen.html