愛知県の大村秀章知事と名古屋市の河村たかし市長が5月13日、日本オリンピック委員会(JOC)に、2026年アジア大会招致の国内立候補意思表明書を共同提出したというニュースが報じられました。アジア大会は正式名称を「アジア競技大会」といい、アジアオリンピック評議会(OCA)が主催する、アジアの国々のための総合競技大会で、「アジア版オリンピック」ともいわれています。

 2026年のアジア大会の開催地は今年9月26日にベトナムで開催されるOCAの総会で決定される予定ですが、今のところ他国・地域からの立候補の情報はないとのことです。もし、愛知・名古屋での開催が決定すれば、国内におけるアジア大会の開催は1994年の広島大会以来となります。また、大村知事は、招致に成功した場合、リニア中央新幹線が開業する2027年の開催を要望する可能性も示したということです。

 国際的な競技大会の招致といえば、名古屋市及び周辺市町村の居住者や出身者で一定年齢以上の方であれば、「名古屋オリンピック」の招致失敗の苦い思い出を想起される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 1981年(昭和56年)10月1日。名古屋が本命視されていた1988年(昭和63年)の夏季オリンピック大会の開催地が発表されました。選ばれた都市は名古屋よりも後に手を挙げたソウル。名古屋は52対27という大差で敗退したのでした。筆者はこのころ小学校低学年でしたが、地元の落胆ぶりは今でも脳裏に焼きついています。思えば、新進気鋭の芸人であったタモリが「名古屋ではエビフライのことを『エビフリャー』と言う」と名古屋のことを揶揄していたのもこのころですし、オリンピックの招致失敗から10年後の1991年には新幹線「のぞみ」号の東京発の始発列車が名古屋駅を通過することが発表され「名古屋とばし」という言葉も有名になりました。しばらくの間、名古屋は暗黒時代だったのかもしれません。

 21世紀に入り、名古屋駅前には超高層ビルが建ち並ぶようになり、国際空港の開港や万博の成功など明るい話題も多くなりました。2027年と遠いようで近い近未来のリニア中央新幹線の開業というイベントを見据え、地価の上昇率をとってみても、現在の名古屋は他都市と比べても明らかに勢いのある状況です。

 そのような中でのアジア大会の招致。仮に招致に成功すれば、地域活性化に弾みがつくことは想像に難くはありませんが、エンブレム問題、メインスタジアムの建設問題、裏金問題と開催前から次から次にトラブルに見舞われている東京オリンピックのようになってはほしくないな、とも思います。