みなさんは「土地の憲法」といわれる法律があることをご存知でしょうか?

その法律を「土地基本法」といいます。同法が制定されたのは平成元年です。そのころといえば、バブル経済の絶頂期にあり、実需に基づかない土地の投機的取引が地価の異常な高騰を招き、社会問題化していました。このような社会・経済情勢を背景に制定されたのが土地基本法だったのです。同法第一条に規定されている目的を見てみましょう。

(目的)

第一条 この法律は、土地についての基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の土地についての基本理念に係る責務を明らかにするとともに、土地に関する施策の基本となる事項を定めることにより、適正な土地利用の確保を図りつつ正常な需給関係と適正な地価の形成を図るための土地対策を総合的に推進し、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 
 土地についての基本理念として、公共の福祉優先、適正な利用や計画に従った使用ということが定められているとともに「土地は、投機的取引の対象とされてはならない」という投機的取引の抑制に関する事項が定められています。これらの理念やこれに係る各主体の責務などが定められていることが「土地の憲法」といわれている所以だと思われます。

しかし、バブル経済崩壊後の失われた20年とも30年ともいわれる時代を経て、我が国は人口減少時代に突入しています。人口が減れば当然土地に対する需要も減少していくことになり、需要のある土地とない土地がより明確に区別されるようになっています。需要のない土地については“負動産”などといわれ、相続登記が行わず所有者が不明になる所有者不明土地問題など新たな社会問題が発生しています。

このように社会的・経済的な背景が変化するなか、バブル期に制定された土地基本法はやや時代にマッチしなくなっています。そこで国土交通省は平成元年制定時以来の土地基本法改正の方向性を取りまとめ公表しています。取りまとめのポイントは以下の通りです。

  • 所有者が土地の利用・管理について第一次的な責務を負うこと
  • 所有者による土地の利用・管理が困難な場合に近隣住民、地域コミュニティ等が行う利用・管理には公益性があり、そのために所有権は制限され得ること
  • 国、地方公共団体は、利用・管理の促進策やその法的障害の解消のための施策を講じるべきであること

国土交通省は今後、本とりまとめ等を踏まえて更に検討を深め、人口減少社会に対応して土地政策を再構築し、2020 年までの土地基本法等の改正に向けて取り組んでいく、としています。

本家?の日本国憲法については、改正する・しないで意見の隔たりが依然として根深いですが、「土地の憲法」である土地基本法は変化した社会・経済情勢を反映し令和時代初頭に改正されるというのは歓迎すべきことであると考えますが、みなさんはどう思われますか。

   国土交通省の報道発表資料 「平成元年制定時以来の土地基本法改正の方向性を公表します―国土審議会土地政策分科会特別部会とりまとめの公表―」