新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、日本高校野球連盟(高野連)などは、5月20日、8月に甲子園球場で予定されていた夏の全国高校野球を中止することを決定しました。夏の全国高校野球の中止は3回目で、戦後では初となります。また、春のセンバツ大会に続き、夏の大会も連続して中止になるのは史上初ということです。

 高野連の資料によると全国の高校球児の数は約14万3千人(令和元年)であり、彼らの多くが闘志を燃やして頂点である夏の甲子園を目指していることを考えるとその無念はいかばかりかと思います。すでに夏の高校総体(インターハイ)も中止が決まっていますし、運動部だけではなく、吹奏楽部や合唱部など文化系の部活もコンクールなどは全て中止でしょうから、新型コロナウイルスという災厄は若者たちが努力の成果を競う場をことごとく奪ってしまっています。

 「努力の成果を競う場」という意味では国家試験も同様といえます。特に『○○士』という名前がつくようないわゆる『士業』の資格を得るための国家試験は、試験科目や出題範囲が膨大であり、試験によって差はあるものの、少なくとも1年から数年は猛勉強をしたうえで年に1度の本番に臨みます。そうした努力の成果を発揮する場である国家試験の試験日程もコロナ禍の影響を受けてしまっています。主なものをみてみましょう。



 5月に行われる予定であった司法試験、公認会計士や不動産鑑定士の短答式試験はいずれも7~8月に延期となっています。また、司法書士試験については時期未定となっています。多くの受験生は本番までの残り日数から逆算して学習計画を立て、本番で最大のパフォーマンスを発揮できるように調整を行います。特に試験直前の1ヶ月くらいは合格するような受験生であればラストスパートとして1日10時間以上勉強することも当たり前ではないでしょうか。それが、試験日程が数ヶ月先送りされることにより緊張の糸がプツリと切れ不調に陥る受験生が増えることが懸念されます。しかも、感染拡大の収束いかんによって再度の延期や最悪の場合、今年度の試験自体が中止となる可能性もゼロではありません。

 このように先行きが見通せない中、日々努力を続けられている受験生の心情を慮ると言葉もありませんが、5月21日には大阪、京都、兵庫の近畿3府県で緊急事態宣言の解除が発表され、感染者が最も多い東京都でも新たな感染者は減少傾向にあるなど少しずつではありますが、明るい兆しも見えています。延期された多くの試験が実施される夏までにはコロナ禍が収束し、問題なく試験が行えるような状況になっていることを願ってやみません。