一般財団法人 国土計画協会の所有者不明土地問題研究会(以下「問題研究会」とします。)が、10月26日に、所有者不明の土地が今後どれだけ広がるか、また、その面積の将来推計と経済損失について公表しました。

この公表は、各紙の新聞やニュースなどで取り上げられましたので、知っている方も多いかと思います。

私が衝撃を受けたのは、“経済的損失が約6兆円(2017~2040年の累計)”になるということです。

普段より、空き地や、取引する土地の隣接地について登記簿を取得することが多くあります。登記簿には所有者の記載があるため、取引に関連する連絡をしたいときや、不動産を購入いただく方に隣接地の方をお知らせするためです。

しかし、登記簿に記載されている所有者は実際の所有者と異なることが多くあります。登記は第三者への対抗要件になりますので、売買の場合はほとんど登記をするのに、相続では登記をされない場合があります。それは、登記に強制力はないため、各々の判断で行われているからです。

なお、相続登記をしないまま相続を繰り返すと、所有者がネズミ算的に拡大し、全員と連絡を取ること、意見をまとめることが困難になります。このことも問題研究会は指摘しています。

このように、普段より、登記簿の所有者と真の所有者が異なる登記簿を数多く見るため、この公表の題目を見たときに、所有者が不明(分からない)の不動産は多いだろうというのは推測はできたものの、経済的損失までは思いつきませんでした。

経済的損失の項目と経済的損失は下記のとおり公表されました。
①探索コスト             約500億円
②手続きコスト           算出不可
③機会損失             約22,000億円
④災害発生時の潜在コスト    算出不可
⑤管理コスト             算出不可
⑥管理不行き届きによるコスト  約36,000億円
⑦税の滞納             約600億円    合計約6兆円

この中で、多くを占めるのが、機会損失と管理不行き届きによるコストです。

機会損失では、所有者不明の土地所有者と連絡が取れず、用地取得が遅れ、予定通りに事業が行われなかった場合などを想定しています。

管理不行き届きによるコストは、主に農地や森林などを想定しています。農地や森林が手入れさてていれば、農地では、洪水防止、土砂崩壊防止等、森林では、二酸化炭素吸収、表面浸食防止、洪水緩和等の機能が発揮されないことを想定しています。

問題研究会のアンケートによると、今後の相続でも30%近くの方が相続登記をされず、所有者不明土地は、ますます増加するようです。

バブル期と異なり、不動産神話は崩れ、不動産の価格は右肩上がりとはいきません。そのため、不動産に関する関心が薄くなったからか、相続しても利用しないこと、価値が低いということが、相続登記をしない理由かもしれません。

しかし、現状のように、登記を各々に任せていると今後も、登記簿の所有者と真の所有者が異なるなどの所有者不明土地が増え、経済的損失が減少することはありません。

公共事業の用地取得をする場合など、取得用地の所有者が登記簿の所有者と異なり、真の所有者と連絡がつかない場合は、失踪宣告の制度のように官報等で公表し、ある一定の期間が経過した場合には、対象地は国庫に帰属するなど、制度変更が必要だと感じました。