丸の内といっても東京ではなく名古屋の話です。

 名古屋市中区丸の内。名古屋城の南方、久屋大通、堀川、桜通、外堀通で囲まれた地区です。古くからビジネス街として発展してきましたが、最近では交通利便性の高さや学区の人気に注目が集まりマンション建設も盛んに行われています。そんな丸の内地区において気になる動きがいくつかありますのでご紹介したいと思います。

① 産業貿易館本館がリニア中央新幹線の変電所用地に!

 3月10日、愛知県が丸の内3丁目にある産業貿易館本館を約36億円でJR東海に売却することを決定したというニュースが報じられました。産業貿易館は1963年に開館、商談会や物産展などに用いられてきましたが代替施設となるウインクあいちが開業したことや耐震性の問題から現在は閉鎖されています。鉄道関連の施設に用いるという公益性の観点から入札ではなく、不動産鑑定業者2社の鑑定評価額の平均に基づく随意契約により売却を行うとのことです。


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産業貿易館本館は外堀通と本町通が交差する「本町橋」の交差点の南東側に立地しています。外堀通の上は名古屋高速都心環状線の高架となっています。JR東海は建物を取り壊した上でリニア中央新幹線の『名城変電施設』を建設します



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 今回売却される敷地面積は約5,800平方メートルとのことなので、1平方メートルあたりの単価は約62万円(1坪あたり約205万円)です。国税庁が公表している平成28年度の路線価をみると1平方メートルあたり50万円(南北の本町通沿い。東西の外堀通沿いは38万円。)であり、路線価を地価公示ベースの時価の水準に換算するために0.8で割り戻すと62.5万円となります。三方路であることや規模の稀少性をどの程度織り込んだ金額なのかは分かりませんが、まあこんなもんかな、という感じはします。


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 産業貿易館の北側は外堀通と公園を介して名古屋城の外堀が広がっており、都心では貴重なヒメボタルの生息地となっています。このため上空を走る名古屋高速都心環状線の照明は一般的なポール式の街路灯ではなくパイプ照明といって道路とパラレルになった帯状の照明が採用されています。変電所は不動産の世界では『嫌悪施設』として扱われますので周辺環境や景観により配慮した計画が求められます。


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 産業貿易館本館と本町通を挟んだ場所に建つ産業貿易館西館。こちらも現在は閉鎖されており愛知県が取り壊す予定ですが、跡地の利用方法は未定とのことです。敷地面積約2,300㎡、容積率600%というスペックを有する土地であり、30階建程度のタワーマンションの建設が十分可能であると考えられます。仮に入札での売却となればマンションデベロッパーが本館より高値で入札するかもしれませんただし、変電所に近接した土地となることから、その分、マイナスの影響は考えなければなりません。


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 丸の内地区の北側には三の丸地区の官庁街が広がっています。名古屋城の南側を走る出来町通沿い、名古屋法務局などが入る合同庁舎の西隣ではリニア中央新幹線の『名城非常口』の工事が既に始まっています。地盤が軟弱でリニア中央新幹線の工事の中でも最も難しい工事の一つになるであろうといわれている名古屋駅地下での工事も昨年12月に着工されており、名古屋中心部で働く者にとってはリニア中央新幹線の工事というものがいろいろな意味でより具体的に生活と密着したものになっていく気がしています。


② 日本郵政の建物が解体。広大な更地が出現!

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 ①でご紹介した産業貿易館本館と七間町通を挟んだ土地には日本郵政グループの建物が建っていましたが、現在解体が進み、ほぼ更地の状態に近づいています。この土地についてはまだ情報もなく、どのように活用されるかは全く不明です。登記情報を調べていないので詳細は不明ですが、地図ソフトによる概測では面積は6,700平方メートル程度です。東側には名古屋で最も評判の高い小学校の一つとされる名城小学校があり大規模マンションには最適の土地です。隣接することになる変電所についても建物配置の工夫により居住部分と引き離すことにより産業貿易館西館の土地よりは影響を少なくすることができると思われます。個人的には、丸の内地区ではマンションの増加に比べて食料品などの最寄り品店舗が不足していることから、スーパーマーケットなどの商業施設を併設したタワーマンションが建設されることを期待しています。日本郵政は東京・名古屋・福岡(博多)で大型ビル(JPタワー)を建設するなど不動産業にも進出しており、もしかしたらどこかのマンションデベロッパーと組んで事業主体としてこの土地の再開発に取り組むのかもしれません果たしてどうなっていくのでしょうか。



※写真の撮影日はいずれも3月17日