賃貸住宅や事務所を借りる際に支払っている「家賃」、建物を建てるために土地を借りる際に支払う「地代」。これらを一括りに「賃料」といいますが、「賃料」はどのようなメカニズムで決定されるのでしょうか?今後、数回に分けて賃料形成のメカニズムを解説していきたいと思います。

<そもそも「賃料」ってナニ?>

 「賃料」というものを捉えるにあたって、まず想起していただきたいのは、一本のリンゴの木です。一本のリンゴの木という“元手”(=元本)があって、リンゴの実という“果実”を生み出すのです。不動産の場合も同様に、土地や建物といった元本となる資産があって、「賃料」という“果実”が生み出されるのです。ちなみに法律上、リンゴの木からなるリンゴの実などを『天然果実』といい、土地や建物を貸した場合の賃料を『法定果実』といいます。
このように“元本”があって、“果実”が得られることを不動産評価の考え方では「元本と果実の相関関係」といいます。

 少し専門的になりますが、不動産鑑定士が不動産を評価する際に準拠する『不動産鑑定評価基準』の該当箇所をみてみましょう。

 「不動産の経済価値は、一般に、交換の対価である価格として表示されるとともに、その用益の対価である  賃料として表示される。そして、この価格と賃料との間には、いわゆる元本と果実との間に認められる相関関係を認めることができる。」(不動産鑑定評価基準総論第1章2)
 
 言い換えると、「価格」とは自分のモノにするために支払わなければいけない金額、すなわち、“所有権の対価”といえる一方、「賃料」とはそのモノを所有せずに、一時的に借用するために支払わなければならない金額、すなわち、“利用の対価”と捉えることができます。
 
 したがって、賃料がいくらかということを知るためには、そのもととなる不動産自体の価値がいかほどのものであるかを知る必要があるのです。
 
 次回は、「賃料の特性」について解説したいと思います。