11月5日に、Yahooとソニー不動産が、検索サイト「Yahoo!不動産」を利用して、売主が不動産仲介業者を介さずに中古マンションを販売する新しい販売方法“おうちダイレクト”を発表しました。


おうちダイレクト http://pr.yahoo.co.jp/release/2015/11/05b/


 おうちダイレクトの特徴

①豊富な情報量の物件データベースと高精度な不動産価格推定エンジン
 おうちダイレクトでは、マンションに関する豊富な情報がデータベース化されており、利用者は自分の住戸の推定成約価格を知ることができるそうです。
 推定成約価格の精度は、1都3県で6.08%、東京都23区で5.39%とされています。


②「Yahoo!不動産」に簡単無料掲載(売り出し)
 中古マンションの所有者は、簡単な情報入力と所有者確認手続きのみで、自分の住戸の物件情報を「yahoo!不動産」に掲載し、購入希望者を募ります。
 中古マンションの売出価格は、上記①を参考に所有者が自由に設定でき、掲載料は無料とされています。


③購入者との直接質問・回答
 おうちダイレクトでは、購入検討者が所有者に対して、中古マンションに関する質問をウェブサイト上で直接行うことができ、所有者が直接回答します。
  この機能により、所有者は中古マンションのアピールポイントを購入検討者に直接伝えることができるそうです。


④プロによる安心取引サポート
  中古マンションの見学から売買条件の調整や交渉、重要事項の説明、売買契約の締結、売買代金の決済・物件の引渡しといった一連の不動産取引の実務については、ソニー不動産が仲介サービスを提供することで、安全・安心な不動産取引ができると謳われています。


⑤売主の仲介手数料は“無料”
  所有者が自分で中古マンションを販売することで、物件の販売に関連する活動を大幅に低減できることから、売主が本来負担するべき仲介手数料が無料になると謳われています。


 おうちダイレクトで販売する際、所有者が行うこと

Ⅰ.売出価格を決める。
 売出価格は重要です。中古マンションの売却を考えられている方には、高値で市場で売り出しし、反響が少なければ価格を下げればよいと安易に考えられている方もいらっしゃるかもしれませんが、市場が変化したり、新たに競合する物件が市場に出てくるなどし、売却期間が長くなってしまった結果、売却価格が、当初の推定成約価格を下回るという可能性もあります。


Ⅱ.管理費・修繕積立金・その他費用を確認する。
 中古マンションによっては分譲時から管理費等の金額が変更となっているものもあります。管理費等についての確認については所有者自身で調査しなければなりません。
 また、おうちダイレクトでは、管理費等の証明書の発行が求められています。証明書の発行について手数料が発生する場合は売主が負担することになっています。
 
Ⅲ.売り出しフォームの入力を自分でする。
 おうちダイレクトへの売り出しに関するフォームは所有者が入力します。フォームの入力には、おうちダイレクト物件掲載ガイドラインを含め、不動産の表示に関する法令・規則等に反することはできません。例えば、「完全」「万全」等完全性を表す表現であったり、「高級」「資産価値の高い」等割安さを表す表現等を利用することはできません。また、周辺の施設については、施設の固有名詞と道路距離を調べて記載する必要があります。


Ⅳ.購入検討者の質問に答えること
 所有者は、中古マンションの販売開始以後に、購入検討者からの質問に回答する必要があります。回答には、普段見ることがほとんどない「管理規約」や「総会資料」等を調べる必要があったり、質問の中には、管理会社への調査が必要な場合も出てくると思われます。


 おうちダイレクトは、不動産仲介業者で働いている(いた)人等、中古マンションの販売に精通している人で、ある程度時間に余裕がある人にとっては、魅力ある販売方法だと思います。


 しかし、一般の方が利用するには疑問を感じます。おうちダイレクトを利用して、仲介手数料を無料にするためには、所有者自ら行わなければならないことが多く、また、一般の方には慣れない事ばかりですので、作業等で、時間が取られることが多いと思われます。

 また、通常、不動産仲介業者と媒介契約を締結し販売しますと、販売情報は不動産仲介業者間に広まる
仕組みとなっており、多くの不動産仲介業者を通じて、多くの購入検討者に紹介されます。おうちダイレクトは、販売方法が「Yahoo!不動産」に限定されているため、そのような不動産業者間のネットワークを利用することができません。また、他の媒体を利用して中古マンションを探している購入検討者の目に触れることはありません。

 そのほか、おうちダイレクトの特徴①の成約価格の精度に記載があるように、成約価格が推定成約価格を下回る等、成約価格と推定成約価格には、ある程度“ブレ”が生じます。仲介手数料は売買価格の3%+6万円(法令上限価格)ですが、成約価格のブレは、その価格を超える可能性も高いです。おうちダイレクトに類似し、売主の仲介手数料に特典をつけ、中古マンションを販売する会社もありますが、“3%”に着目して、不動産仲介業者を選択することはお勧めできません。